2/24(月)学校支援フィールドワーク成果発表会
- あべさん
- 2021年2月24日
- 読了時間: 6分
学校支援フィールドワークでお世話になった連携校の小学校でフィールドワークの成果発表会が行われました。例年は大学に現場の先生方をお招きする形で成果発表会が実施されていましたが,今年度はコロナウイルスの関係もあり,院生が学校現場を訪問して,成果発表をさせていただきました。発表テーマは①振り返り,②英語授業づくり,③院生と現場教員の協同での授業観察・リフレクション,④ICTを活用した授業の4つでした。今回は発表の概要や感想を書かせていただきます。
(1)振り返り
連携校では授業の振り返りが重視されています。なぜ,振り返りが重視されるのか。その背景を考えるには,「変化と創造のラッシュ」ともいわれるこれからの時代を考えることが一つの道筋になります。
変化を乗り越え,持続可能な社会を作り出していく時代には,「自分の学びの状況を把握し,主体的に自分の学びを調整していく」ような,自己調整的な学びの在り方が求められます。自己調整的な学びを行うためには,振り返りによるメタ認知が必要です。
そこで私たちは,振り返りをメタ認知的に捉えるカテゴリを開発し,自己調整的な振り返りを促してみたいと考えました。開発したメタ認知的カテゴリとは,「学習内容」「学習方法」(メタ認知的モニタリング)「学習方針」(メタ認知的コントロール)の3つです。
児童の振り返り用紙に,この3つの観点での振り返りを促す設問を載せ,振り返りを実施してみたところ,それまでの自由記述の振り返りよりも,「学習内容や学習方法に基づいた学習方針の記述(=自己調整的な振り返り)」が明らかに増加しました。
また同時に,授業についても,児童同士が単元全体の見通しが持てるような授業設計を行うことが,自己調整的な振り返りの増加に貢献していたことが示唆されました。
実践を行って得た課題として,第一に自己調整的な学びを行うことと,そのために振り返りを行うことの意味を児童に語り,納得してもらう必要があること,第二に,授業では協同的な学びを促しかつ目標を明示した上で学びを児童自身に委ねる場面を設定することが必要で,そのことが他者との相互作用の中で自らの学びをコントロールしていく土壌となることが示唆されたことが挙げられます。
(2)英語授業づくり
<6年生の英語授業実践から学んだこと>
①自学の課題として,希望者に英語日記を書かせ,英語による自己表現の場を継続的に与
え,評価されていたこと。課題に加えて,教師の側から英語日記でよく使うであろう表現
をまとめた表現集を配付し,児童が活用することができている。児童が習った表現を自分
の事実に即して実際に使用する機会に恵まれることは,最良の英語学習法であると思います。
②教室の黒板に毎朝書かれる学級担任からのメッセージの中に,児童が習った英語を使った表現を多数織り交ぜて,児童とのコミュニケーションを図っておられたこと。先生自らが,英語を使おうとする姿を児童に示すことは,何よりも強力な英語習得への動機づけになっているのではないかと思います。
③卒業文集で「将来の目標」を英語で寄せ書きするコーナーを作られていたこと。習った表現で,「私は~になりたい。私は~が得意だから,~をして,~みたいになりたい。」などと3文~4文で将来の目標を英語で書いていました。これも自己表現の場としてとても素敵な取り組みだと感じました。
④朝の会で英語の曜日と日付を日直が確認し,黒板に記入するという活動を継続されていたこと。授業以外でも継続的に英語教育の要素を取り入れる場の設定を行うことで,英語表現により一層慣れ親しむことができるのだと思います。
<英語授業に関する課題アンケート結果について>
連携校の先生方に回答して頂いた英語授業に関する課題を共有し,少しだけ提案を行いました。授業づくりの課題の部分では,楽しくて,技能が身につく活動として2点,Criss-CrossゲームとWhat am I?ゲームを紹介しました。またClassroom Englishのリストや,パフォーマンステストの評価枠(ルーブリック),音読活動に便利なワークシートの紹介等を行いました。
(3)院生と現場教員の協同での授業観察・リフレクション
院生と現場教員の協同での授業観察は,現職院生と学級担任の先生が観察する児童を事前に決定した上で,学卒院生の授業を観察し,授業後に学卒院生,現職院生,学級担任の先生でリフレクションを行った実践です。この実践を4回繰り返しました。
学級担任の先生に協同での授業観察・リフレクションを通しての気付きをインタビューしたところ,学級担任の先生が自分の学級を客観的に観察し,授業後に対話的なリフレクションを行うことで,児童についての更なる気付きが生まれ,児童の実態に合わせた指示の出し方や学習活動の枠組を再考していたことが分かりました。
連携校でも日常的に職員間の授業観察が行われており,先生方が授業時の自分のクラスの児童を客観的に見取る機会が確保されています。日常的に教員同士の協同での授業観察と対話型のリフレクションを行うことで,子どもの姿を基にした授業改善の方向性を見出せるのではないかと考えられます。
(4)ICTを活用した授業
ICTを活用した授業実践の報告では,文部科学省のGIGAスクール構想のリーフレットや新潟県版GIGAスクール構想の文章を引用しながら,これまでの教育実践の蓄積とICTをベストミックスさせて,学習活動の一層の充実,主体的・対話的で深い学びの視点からの授業改善を目指していることをお伝えし,院生が実践したICTを活用した授業実践の動画を先生方に見ていただきました。
授業動画での子どもの姿を見ると,ICTは子どもと子どものコミュニケーションを生み出し,協同的な学びを促進するものであること,ICTは,鉛筆やノートなどの文房具と同様に,学習に不可欠なツールとして,子どもが学習目標の達成のために必要に応じて使用することが大切であることが分かりました。このことを先生方にお伝えすると頷いて下さる方が大勢いました。
ICT機器はこれまでの教育を否定するものと捉えられることもありますが,これまでの教育実践の蓄積とICTのベストミックスというキーワードを忘れずに,日々の実践を行うことで,今までよりも前進した授業になるのではないかと思います。
今回は校内研修を兼ねての成果発表会であり,大勢の現場の先生方を前にした発表であったため,とても緊張しましたが,現場の先生方が共感的に話を聞いて下さり,生き生きと発表することができました。発表後には,内容に関する示唆に富む意見や質問もいただくことができ,得るものの多い有意義な発表となりました。
様々な実践の機会を与えて下さり,院生の活動に快くご協力していただいた連携校の先生方には感謝の思いで一杯です。ありがとうございました。
また,フィールドワークの実践報告書に実践の詳細が書かれていますので,気になる方は大島研究室までご連絡ください。
文責:阿部,村山

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